佐藤医師(仮名):北海道の医師数って、地域によって差があるってよく聞きますが、
実際どれくらいの違いがあるんでしょうか?
長田(キャリアアドバイザー):北海道全体で見ると、2020年末時点で医療施設に従事する医師数は13,129人。
人口10万人あたりでは251.3人です。
全国平均の256.6人と比較して、やや少なめではあるものの、ほぼ同水準といえます
(北海道保健福祉部「地域医療構想」より)
もくじ
1. 医師が集中する札幌市
佐藤医師:札幌市はやはり医師が多いんですよね?
長田:そのとおりです。札幌市には、北海道全体の医師の約半数が集まっています。
2020年のデータによれば・・・
病院勤務医:約4,937人(人口10万人あたり251.9人)
診療所勤務医:1,704人(10万人あたり87.0人)
全体として医療供給体制は安定しており、大都市としての医療資源が充実しています。
(札幌市「第3次地域医療構想」より)
2. 地方都市の医師数は?~旭川・函館・帯広
佐藤医師:札幌以外の主要都市はどうでしょう?たとえば旭川や函館、帯広あたりは・・・
長田:それぞれの都市の医師数と人口に対する割合を見ていきましょう。
旭川市(上川中部医療圏)
医師数:約1,600人前後(※推定、上川圏域合算)
≪人口10万人あたり:約274.0人程度≫
旭川は、旭川医科大学附属病院を中心とした高度医療拠点であり、道北で唯一「医師多数区域」とされる地域です。
地域中核病院も多く、周辺からの紹介・搬送患者も多く受け入れています。
函館市(渡島・檜山医療圏)
医師数:約1,400人前後(渡島全体ベース)
≪人口10万人あたり:約236.0人程度≫
函館市は南北海道の医療中心都市で、五稜郭病院や市立函館病院などが地域医療を支えています。
ただし、渡島圏域全体では医師偏在指標が全国平均を下回るため、今後の確保策が課題です。
帯広市(十勝医療圏)
医師数:約700人前後(十勝全体)
≪人口10万人あたり:約212.0人程度≫
十勝圏は広域でありながら都市集中型の特徴があり、帯広厚生病院などを中心に診療体制が整えられています。
とはいえ、広い管内に比して医師数は十分とは言えず、出張診療や遠隔医療の活用が進んでいます。
3. 医師不足が深刻な圏域:釧路・根室
佐藤医師:じゃあ逆に、医師が少ないエリアは?
長田:釧路・根室が代表的です。
釧路圏域:418人(183.7人/10万人)
根室圏域:100人未満(98.9人/10万人)
特に根室は全国でも最低レベルで、救急・産科・小児科など一部診療科の確保が大きな課題となっています。
(釧路振興局資料より)
4. 医師偏在の背景とは?
佐藤医師:やっぱり、札幌に医師が集まるのは当然なんですかね?
長田:背景としては以下の通りです。
都市部への医療資源集中
大学病院、研修施設が札幌に集中。若手医師にとって学び・働きやすい環境です。
過疎地の生活条件の差
地域によっては保育所・住宅・教育・交通アクセスの課題も大きく、ライフスタイルに制限が出ることも。
医師の高齢化
北海道の医師の平均年齢は51.3歳。若手医師の地域定着を進めないと、将来的な人材枯渇も予想されます。
5. 政策的対応と将来展望
佐藤医師:こうした偏在をなくす取り組みって、実際進んでいるんですか?
長田:はい、北海道は以下のような施策を講じています。
地域枠医学部生の配置と奨学金返還支援
勤務条件や処遇改善(勤務時間制限、当直回避など)
ICTや遠隔医療の導入支援
医師偏在指標を活用した計画的配置
これらにより、少しずつではありますが道東・道北地域での医師定着が図られています。
6. 数字で見る主要都市と偏在指標まとめ
都市/医師数(推定)/人口10万人あたり医師数/医療圏名/備考
札幌市/約6,640人/約251.9人/札幌医療圏/全国平均超え
旭川市/約1,600人/約274.0人/上川中部医療圏/医師多数区域
函館市/約1,400人/約236.0人/渡島医療圏/中核拠点だが全国平均未満
帯広市/約 700 人/約212.0人/十勝医療圏/地理的広さに対し数は不足
釧路市/約 418 人/約183.7人/釧路医療圏/医師少数区域
根室市/約100人未満/約98.9人/根室医療圏/全国最少水準
7. 最後に
佐藤医師:こうして数字で見ると、札幌や旭川は恵まれた環境ですね。一方で根室や釧路は本当に大変そうですね…。
長田:そうなんです。北海道全体で見ると医師数は増加傾向ですが、地域ごとの偏在は依然として深刻です。
都市部で経験を積んだ医師が、一定期間地方に赴任するようなキャリアモデルも今後重要になるかもしれませんね。
佐藤医師:たしかに。それぞれの地域の「必要とされる現場」を知ることは、自分の働き方を考えるうえでも大切ですね。
長田:おっしゃる通りです。医師としての成長と、社会への貢献。そのバランスを見極めながら、今後のキャリアを一緒に考えていきましょう。
8. 参考資料
北海道保健福祉部「地域医療構想」
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(令和2年)」
札幌市「第3次地域医療構想資料」
北海道釧路振興局「医師確保計画」
各市町村医療圏別データ(推定値含む