相談者（医師）：
「退職を申し出たら、院長や事務長から強く引き止められてしまいました…。医師不足なのはわかりますが、どう対応したらいいのか悩んでいます。」

キャリアアドバイザー：
「医師はどの地域でも慢性的な人材不足です。特に地方病院や当直体制がギリギリの医療機関ほど、“一人欠けると回らない”ため、引きとめは珍しくありません。」

相談者：
「理解はできますが、だからといって辞められないのも困ります…。」

キャリアアドバイザー：
「大切なのは “感情” ではなく “事実ベースの理由” を淡々と伝えることです。医師の退職は法律上、比較的シンプルに成立します。
ポイントを押さえれば、揉めずに円満に退職できますよ。」

相談者：
「やってはいけない対応ってありますか？」

キャリアアドバイザー：
「はい、特に以下の３つは避けてください。」

● NG①：曖昧な理由のまま話す

→ 「少し考えたい」「まだ迷っていて…」など曖昧な表現は、
“説得すれば残るかも”と捉えられます。

● NG②：感情的になってしまう

→ 人間関係が原因でも、怒りや不満をストレートに出すと問題が拡大します。

● NG③：退職日の変更をその場で承諾する

→ 「あと3ヶ月だけ…」「診療体制が整うまで…」と言われても、
その場で即答すると話が長引きます。

相談者：
「どう断るのが一番いいですか？」

キャリアアドバイザー：
「ポイントは2つだけ。」

1. すでに意思決定は完了していることを明確に伝える

2. 相手を否定せず、感謝を添える

以下は状況別の“医師向けの上手な断り方”です。

● 例①：キャリア形成が理由の場合

例文
「今回の転職は、今後の専門性を高めるための決断であり、気持ちは固まっております。これまでの経験には感謝しておりますが、進むべき方向性が明確になったため、予定通りの退職日でお願いいたします。」

● 例②：家庭・生活環境が理由の場合

例文
「家庭の事情により勤務形態の見直しが必要となり、現勤務体系を続けることが難しくなりました。環境的に改善は困難と判断し、退職の意志は変わりません。これまでのご理解に感謝いたします。」

● 例③：労働環境・体制の問題が理由の場合（オブラート必須）

例文
「業務量や勤務体制について、改善に向けて相談を重ねましたが、自身の体力・専門性を考えると長期的に継続することが難しいと判断いたしました。現状を否定する意図はなく、退職は個人的な選択として受け止めていただけますと幸いです。」

● 例④：強く引き止められた場合

例文
「お声掛けいただけるのは大変ありがたく思っております。しかし、新しい職場への入職準備も進んでおり、意思は変わりません。職務の引き継ぎは責任をもって対応いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

相談者：
「“後任が来るまで延長してほしい”と言われたら？」

キャリアアドバイザー：
「医師によくあるパターンですね。対応はこうです。」

● 最初に「原則お断り」が基本

例文
「大変申し訳ありませんが、次の勤務・家庭都合の調整があるため、退職日の延長は致しかねます。」

● それでも強く言われたら

“交渉余地はゼロではないが、明確な線引き” が重要。

例文
「現勤務先にも今後ご迷惑をかけないよう調整していますので、延長は難しい状況です。ただし引き継ぎ資料の作成や紹介状の準備など、可能な範囲で負担軽減に努めます。」

→ 退職日だけは絶対に動かさない
→ その代わり「引き継ぎ」に協力する姿勢を見せる
これが最も揉めないやり方です。

相談者：
「現場は忙しいので、退職の切り出し方も迷います…。」

キャリアアドバイザー：
「医師がスムーズに退職するための実務ステップは以下の通りです。」

● ステップ①：最初に伝える相手は院長 or 事務長

外科系・内科系など診療科単位での判断ではなく、
組織のトップ に伝えるのが鉄則。

● ステップ②：書面で「退職願」を提出

口頭だけだと曖昧になるため、
書面に残す → 双方が確定できる。

● ステップ③：引き継ぎ計画を自ら提示

• 担当患者

• 手術予定

• 経過観察患者

• 当直・オンコールの調整
  を一覧にして提出すると、信頼度が上がり揉めにくい。

● ステップ④：退職後の進路や病院名は言わなくてもよい

“次の勤務先を教えてほしい”と聞かれても、
法律上は回答義務なし。

キャリアアドバイザー：
「医師の退職は引きとめが強いですが、
“断り方の型” を押さえれば必ず円満に退職できます。」

まとめ

• 原則は「意思決定は完了しています」と明確に伝える

• 感謝の言葉を添えて淡々と対応する

• 退職日の延長はその場で承諾しない

• 引き継ぎは前向きに協力する姿勢

• 難しい場合は第三者（エージェント）にプランの相談をする

相談者（医師）：
「断るのが申し訳ないと思っていましたが、冷静に伝えれば大丈夫なんですね。」

キャリアアドバイザー：
「その通りです。医師の転職は“キャリアの再構築”です。
先生の未来を大切にするための退職なのですから、
どうか自信を持って前へ進んでください。」